「みはじ」「はじき」で教えることの是非
「みはじ」というのは、もしかしたらご存知ない方もいらっしゃるかもしれません。
これは、速さにかかわる三要素「みちのり」「はやさ」「じかん」を大きな「T」の字の隙間に入れていくと、簡単に公式を覚えられるという教え方のことです。「はじき」や「きはじ」などのバリエーションがあります。
1988年ころから普及してきた方法論と言われていているので、保護者の方の年齢によっては、そもそも「みはじ」という方法論が存在しなかった可能性があります。1972年生まれの私も、中学受験時にこのような方法で習った記憶はありません。
繰り返される答えの出ない議論
この「みはじ」は、原理的な理解無しで、機械的に解答を導くことができるため、原理的な理解を重視すべきで「みはじ」なんて教えるべきでないという派閥と、まず解けるようになることが大事なので「みはじ」は教えるべきという派閥の対立が定期的に繰り返されているます。
最近も、このブログでもおなじみ、さくら個別指導の國立先生がブログでこの問題をテーマにあげて以来、多くの人たちによって様々な意見がネット上で交わされています。
では、STUDY PLACE 翔智塾ではどうしているかというと・・・
各先生にお任せで、統一見解はありません(;^_^)
理由は簡単です。
この手の問題の正解は、けっきょく「ケースバイケース」としか言いようがないからです。
もちろん、「ケースバイケース」で終わったらおもしろくありませんので、私個人の基本的な考え方を今日はまとめてみたいと思います。
単位量あたりの大きさをしっかり理解させる
速さの概念も、単位量あたりの大きさの応用例にすぎません。
単位量あたりの大きさは、中学生になると、圧力、密度、濃度など主に理科で頻繁に用いられる概念です。苦手な子が多い単元のオンパレードですよね。
しかし、日常生活でいえば、お肉の値段などで、じつは結構身近で使われていることをしっかり確認させ、その身近で具体的な例を挙げ考えさせていくと、子どもたちの理解がスムーズに進みます。
速さの概念も、時間を単位量にそろえて比較していくためのものだという<流れ>をしっかり意識付けさせることを考えて授業をしています。
まずは<目に見えるもの>から「速さ」の概念を理解させる
「速さ」を学習する際に混乱してしまう子がいる原因のひとつとして、「距離」の概念が抽象的すぎてイメージできないということがあるように思います。
そこで、いきなり目に見えない抽象的な概念を登場させずに、もっとイメージしやすいものから考える訓練をさせます。
たとえば、
A君は、10分間で20個のお饅頭を食べられる。
B君は、5分間で12個のお饅頭を食べられる。
では、どちらのほうが早食いなの?
というように、「饅頭」のような明確に個数のイメージが持てるものを例に挙げると、つまづく子はほとんどいません。
初学段階における「みはじ」の位置づけ
いよいよ本格的に速さの問題に入ると、多くの先生方が目指すように、まずは原理的な理解を目指します。前段の「饅頭」などで、本質は理解できている生徒が多いので、この段階では「みはじ」は使いません。「速さ」の求め方、「みちのり」の求め方、「時間」の求め方などが混在してくる段階で、「ウラワザ」だけどね・・・という位置づけで紹介はします。
原理的な理解ができている子は、「みはじ」のほうが手間がかかるという印象を持ちます。原理的な理解だけだと厳しい子には「みはじ」はよい補助輪になります。補助輪は、いつか取り払うことが目標になりますよね。
文章題における「みはじ」の位置づけ
単純な基礎問題だと、できれば「みはじ」を使わずに解いてほしいなぁというのが本音です。
しかし、速さの違う者どうしの問題が出てくると、むしろ積極的に「みはじ」を使わせています。
ただし、あの昆虫の背中のような「みはじ」ではなく、表に「みはじ」の順番に各要素を書きだすという指示になります。
歩いている人 | 走っている人 | 合計 | |
みちのり | |||
はやさ | |||
じかん |
この表の威力は、速さや時間を求めるときに、他の2要素を書き込むと、それがそのまま「分数」として答えが出てしまう点です・・・PC上だとうまく説明できないのですが・・・(^^;
しかも、他の問題にも応用ができます。
たとえば、食塩水の問題でも「塩コショウ」で解ける・・・などなど。
その他の問題への応用
あの「昆虫型・みはじ」は、オームの法則でも活躍します。
回路図の「抵抗器」「電源」のところに、「昆虫型・みはじ」のオームの法則版を書かせて、わかっている要素から数字を入れていくと、答えが出てくるという仕組みです。
オームの法則は、「電圧」「電流」「抵抗」という目に見えない要素を扱うので、これを原理的に理解してもらうというのは、高校の理科までいかないと難しいところです。
こういうところは、「機械的に解答がでる」ことを最大限に活かしていきます。
ちなみに、「昆虫型・みはじ」のオームの法則版は、『船(V)を狙うクラーケン(A)と大タコ(Ω)』と教えています(#^^#)
生徒によって授業は千変万化
前提でも述べた通り、そもそも授業というのは、生徒の反応を見ながらつねに進行方向とスピードを調整しながら行うものです。
ですから、子どもたちひとりひとりによって、教え方はおのずと変わってきます。
そのあたりの見極めと調整が、講師の「腕の見せ所」となるわけですね。
硬直した「べき論」ではなく、できるだけ多くの引き出しを持って柔軟に対応できるようでありたものだといつも考えています。
それでは、今日はこのへんで。
中村 五十一
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