電子辞書から書籍辞書へレベルアップ!?
翔智塾では、学力の基盤は国語の語彙力にあると考えています。そのため、ほぼすべての生徒に毎回語彙力増強のための宿題を課しています。
イマドキだなぁと思うのは、子どもたちの多くが最初に自分の所有物として辞書を手にするのが、書籍の辞書ではなく、電子辞書が多いということです。
なにより素早く引けますから、辞書を引くということへの抵抗感を持たずに、言葉の意味を知らべる楽しさに触れられるというのが良いですよね。
それに、なにより、電子辞書というのはなかなかかっこいいアイテムですから、所有している幸せが大いに感じられるのもいいですよね。
それでは、中高生になるとどうでしょうか。中高生になるとスマホを持っている子が多いですから、電子辞書を使わなくなるかと思いきや、そうでもないようです。
なるほど、たしかに教室で中高生たちを見ていても、スマホを辞書代わりに使っている子はほぼいません。
さきほどの記事にもありますけれど、高校生くらいになり、自発的に本気で成績を上げたいと思うようになると、勉強中はスマホは隔離しますからね。辞書代わりにという口実でスマホを持ち出せば、そのまま惰性で勉強態勢がなし崩しになるのは、彼らが自身の体験としていちばんよくわかっているからでしょう。
さて、そんな理由で辞書のメインストリームとして君臨する電子辞書ですが、その長所である利便性がまた短所でもあったりします。
これは電子辞書に限ったことではなく、IT機器による情報収集全体に言えることですが、「素早く目的の情報にたどり着ける」という長所は、「寄り道を楽しめない」という短所でもあるということなのです。
いや、ネットでも、「ネットサーフィン」(死語ですが・・・)でさまざまな情報に触れることができるよ・・・
という反論もあろうかと思います。
しかし、そこには調べている人間の意思が少なからず介在せざるを得ません。いろいろな情報に触れているようで、じつは見たい情報しか見ていないというのは、現代のネット社会では「あるある」で、そうした偏狭な「知恵者」たちの無毛な議論の屍が累々と電子空間をうめつくしていますよね。
お断りしておきますが、私は日本でよくあるような「紙」への信仰はもっていません。むしろ、日本社会全体のITリテラシーの世界水準からの大幅な遅れには強い危機感を持っています。
しかし、どんなツールや方法論にも長所と短所があり、それらを補完しあって使っていくことを、翔智塾の小学生たちが気が付き始めているというのが、今回のお話しのテーマです。
書籍辞書の強みというか、「おもしろさ」は、知らなかった単語に無作為に出会えるということにあります。
目的の語のページを開く過程で通過するページに載っている単語は否が応でも目に入りますし、目的の語のページにも、お目当てでない無い単語が まるで夜空に輝く無数の星たちのように、煌めいています。
これが、子どもたちの語彙力を大いに高めてくれるのは言うまでもないことです。人は言葉によって世界を認識しますから、語彙力の幅を広げていくことは、その子の世界観を広げていくことでもあります。
最近、塾の小学生から「書籍の辞書を買いたいのだけれど、どの辞書がいいですか?」という質問をよく受けるようになりました。こうした子たちのほとんどが、電子辞書を所有して、かつとても上手に使いこなしている子たちです。そういう子たちには、授業中はあえて教室の書籍辞書を引かせているので、その魅力が伝わってきたのだと思います。
私の世代の、書籍の辞書を使いこなしてから進学のご褒美などで電子辞書を手にいれるという順番が、今の子たちには逆になっていることに面白さを感じつつ、やはり道具は適材適所でさまざまなものを使いこなせるのが良いのだという月並みなことを強く感じている今日このごろです。
中村 五十一
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